北緯1度の暮らし

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櫻庭露樹と近藤麻理恵 -掃除と片付けの哲学-

あまり人には言っていないのだが、櫻庭露樹という人のYouTubeチャンネルをよく視聴している。ばかばかしいと思いながらも、ついつい毎回再生してしまう。50代の櫻庭露樹が昭和ネタおやじギャグを連発すると、相方の30代アシスタントが「なんですか、それは?」とボケたり突っ込んだりするのが、疲れた頭にふうっと笑いを吹き込んでくれる。そのアシスタントがまた、イケメンでもないくせにバカバカしいながら素直そうで好感度が高い不思議なキャラクターなのである。

さて、このばかばかしい二人の掛け合いはさておき、この櫻庭露樹という人は、開運のための断捨離ならぬ「全捨離」を提唱している。徹底的に捨てる、部屋に物を置かない、とにかく床面積を広げる、などを動画の中で繰り返し提唱しているのだが、特に師匠である小林正観の教えである徹底的なトイレ掃除を踏襲&推奨している。トイレをきれいにするのはよいことであって、悪いことなどひとつもないが「トイレを掃除すると運気が上がる、お金が入ってくる」と言われると、いかにも胡散臭い気がするだろう。

YouTubeを視聴するうちにわかったことであるが、こういう種類の人は、自分を含めたスピリチュアル系のカリスマを「こちらの世界の人」と呼んでいるようだ。

以前、片付けコンサルタントの近藤麻理恵(こんまり)のコンサルティングを取材したテレビのドキュメンタリー番組を見たとき、これはもはや宗教だなと感じた。テクニカルなノウハウを教えるだけでは改善しない重症なクライアントに対して、潜在意識下にあったトラウマの存在を顕在化させ、忘れていた心の傷跡に向き合わせる様子は過酷だ。私はそれをコンマリ教と呼ぶ。

にもかかわらず、こんまり自身の言動には胡散臭いスピリチュアルの匂いが全くしない。あくまでスッキリした部屋で気持ちよく暮らしたい、好きなものを身近に置いてハッピーな気分でいたい、片付ける行為そのものが好きで、楽しいのだ。

一方、櫻庭露樹の場合、全捨離は開運のための手段である。「トイレを掃除するとお金が入ってくる」というのは、一見、非科学的に思われる。だが私は考えた。「南無阿弥陀を唱えれば誰でも極楽浄土に行ける」というのと同じことではないだろうか。お経を唱えることは目的ではなく、極楽浄土に行くことが目的なのである。そもそも極楽浄土という概念からして科学からかけ離れているが、南無阿弥陀仏を唱えることで救われる精神があるのだろう。全捨離もこれと同じで、トイレといういわば家の中で最も汚い部分をピカピカに磨き上げることで、他の部屋の汚れが気になり掃除したくなり、結果的に家の中がきれいになる。普通の人があまりやりたがらないトイレ掃除を率先してやると、人に信用されたり尊敬されたりするかもしれない。ひいてはそれが開運につながるのではないだろうか。

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Fullerton Hotel のアフタヌーン・ティー